スロージューサーは自宅で野菜100%のコールドプレスジュースを搾れることから、健康や美容を意識する方から人気のキッチン家電です。
最大の特長は「刃を使わず圧し潰して搾る」ことです。これによって野菜や果物の栄養素を壊すことなく野菜ジュースをつくれるとされているところです。
この通説について嘘か本当かと気にされる方向けに、要点をご説明します。
摩擦熱で栄養が壊れるは嘘?本当?
野菜ジュースをつくれるキッチン家電としては、スロージューサーのほかにミキサー・ブレンダー・高速ジューサーがありますが、これらは刃(ブレード)で野菜果物を砕いてペースト状のジュースにしていく構造です。
そのため、ミキサーや高速ジューサーの場合、刃と野菜果物との間に摩擦熱が生じて栄養素の何割かが壊れてしまう、と考えられています。
嘘と考える根拠は?
それに対して、「ミキサー・ブレンダーの刃との摩擦熱で栄養素が壊れるというのは、嘘」と考える方もいらっしゃいます。
嘘と考える根拠ですが、たとえば熱に弱いとされる栄養素には、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンE・ビタミンB1・葉酸・パントテン酸などのビタミン類があります。(参考資料:大阪教育大学「ビタミンの安定性」/国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「ビタミンについて」)
これらの熱に弱いビタミン類は調理による加熱でも壊れるといわれますが、温かい料理をつくる程度の加熱は必要で、ミキサー・ブレンダーで野菜ジュースをつくっても、そんなに温かくなったりしないでしょ? というのが嘘と考える根拠のようです。
摩擦熱ってそもそもなに?
ですが、たとえばヒモやロープなどを引っ張ったときに、こすれて「熱っ!」となる体験をされたことのある方は多いのではないでしょうか?
この熱さの正体こそが摩擦熱で、ロープでこすれたら全身の体温が上がるワケではなく、触れていたところだけが熱くなります。
熱で壊れるってどういうこと?
ところで、ビタミンの粒子が熱で壊れるとパッと消えるのではなく、別の物質に変化します。
この別の物質に変化するという化学変化を起こすためのエネルギーとして熱が使われるのです。
つまり、ビタミンの粒子が壊れることで熱が使われて、全体の温度が上がることがないのです。
たとえば、夏の暑い日に打ち水をして涼をとることがありますが、これは水が水蒸気になるときに熱を奪う現象、気化熱を利用したものです。
つまり、熱で壊れるという現象は、ビタミンの粒子が熱を利用して別の物質(役に立たない)に変わるということなのです。
刃との摩擦熱によってビタミンなどの栄養素が壊れる理由
また、ビタミンの粒子は約45nm(100万分の45m)と非常に小さなものです。(参考資料:堀場製作所「ビタミン/トコフェロールの大きさ」)
刃と野菜の間に発生する摩擦熱は、この小さな粒子に吸収されて栄養素を別の物質に変えて(壊して)しまいます。
まさにミキサー・ブレンダー・高速ジューサーの刃と野菜の間に発生する摩擦熱によってビタミンが壊れ、でも全体の温度が上がらないのはこのような現象であることが推測されます。
>>関連記事 ⇒ スロージューサーとミキサーを8項目で比較!栄養素にも違い?
摩擦熱で栄養が壊れることの研究ってあるの?
ここまで長々と説明してきましたが、ミキサー・ブレンダー・高速ジューサーの刃の摩擦熱によって栄養素が壊れるという現象自体を研究した調査結果はありません。
ビタミンの粒子は45nmと非常に小さいものですし、本格的に調査研究しようとすると予算も時間も大変にかかってしまいます。
でも、研究して証明されても成果としてあまり大きくありません。誰も研究しようとしない理由はそういうことだと思います。
やっぱり嘘なの?
ただ、確実に分かっていることは「スロージューサーで搾ったジュースは、ミキサー・ブレンダー・高速ジューサーでつくったジュースより栄養が多く含まれている」という研究結果です。
例えばシャープでは高速ジューサーと比較してスロージューサーの方が、小松菜の葉酸で17%、トマトのペクチンで約2倍、りんごのポリフェノールで32%、オレンジのビタミンCで21%多く栄養素が残るという調査結果を公開しています。
スロージューサーでつくる野菜ジュースに、栄養がより多く含まれていることから科学的に推測した結果、摩擦熱による影響が大きいとされています。
そのため「スロージューサーは摩擦熱によって栄養が壊れない」ということは、嘘ではないと考えられます。
酸化でも栄養素は壊れる
一方で栄養素が空気中の酸素と反応する、つまり酸化によって壊れることは、研究結果もあり広く知られています。(参考資料:JA全農長野「野菜について」)
ミキサー・ブレンダーの場合
ミキサー・ブレンダーは、野菜果物を高速で回転させながら刃で砕きペースト状にしていくという構造上、空気と野菜果物が撹拌され混じりあいます。
空気とかきまぜられるため、酸化によって栄養素が失われるのは避けられません。
高速ジューサーの場合
高速ジューサーはカッターで野菜果物を切削して、フィルターで濾してジュースを搾り出すという構造上、ミキサー・ブレンダーに比較すると、空気に触れる量は少なくなります。
ですが、先ほどの刃(カッター)との摩擦熱によって栄養素が失われてしまいます。
スロージューサーの場合
スロージューサーの場合は、ゆっくりと圧し潰して搾り出すという構造上、摩擦熱が生じにくく、空気とも撹拌されませんので、ミキサー・ブレンダー、高速ジューサーよりも栄養素がしっかりとジュースに残るのです。
比較すると嘘じゃない?
まとめると、栄養素が残りやすい順にスロージューサー>高速ジューサー>ミキサー・ブレンダーとなって、これは実際に出来たジュースの栄養分析の研究結果とも合っています。
含まれる栄養素の量に差がある
スロージューサーでつくる野菜ジュースに多くの栄養が含まれていることは、高速ジューサーも発売しているパナソニックの調査結果にもあります。
この分析はパナソニックの高速ジューサーとスロージューサーの自社製品同士での調査結果なので、信ぴょう性は高いデータと考えられます。
栄養をしっかり摂れるスロージューサー
ご紹介してきたような内容が、スロージューサーで搾り出されるジュース、いわゆるコールドプレスジュースには豊富な栄養がしっかり含まれている理由です。
生野菜よりも栄養吸収効率がいい
もうひとつ大事なポイントとしてコールドプレスジュースは液体で、いわば「歯でしっかり噛んだあと」の状態で、胃腸に入ってくるということです。
そのため、豊富に含まれる栄養素がさらに体に吸収される効率も、生野菜をそのまま食べるよりも良くなるのです。(参考資料:クビンス「The Ultimate Beginner’s Guide To Juicing – Juicing for Health(PDF)」)
野菜料理もしっかり食べてください
ただ、スロージューサーでつくったコールドプレスジュースを毎日飲んでいれば、それで安心というものではありません。
野菜に含まれる栄養素の中には、熱を加えることで出来たり増えたりするものもあります。
置き換えダイエットやファスティング(断食)、ジュースクレンズなど、特別な理由のないときはジュースだけに頼りすぎずに、出来るだけバランスの良い食事を心がけてくださいね。
その上で、スロージューサーでつくるコールドプレスジュースを食生活に取り入れることで、野菜不足になることなくヘルシーな生活を維持する助けになりますよ。